深い呼吸を意識しましょう!
ヨガをしている人にとって「呼吸が大事」というのは共通の認識ですが、前回同様「なぜ呼吸が大事か」を考えてみましょう。
呼吸の働きは生理学的にいうと「酸素を取り入れて二酸化炭素を排出する」
そのシンプルな働きの中にはとても複雑な化学反応があり、私たちの生命活動において非常に重要な役割を持っています。
肺や内臓機能のアップ
私たちの人体は約60兆個の細胞から構成されています。それらの細胞に酸素を届けているのが肺を中心と呼吸器です。
肺の重さは成人で右500~600g、左で400~500gほどに達する、体の中でも大きな器官の一つ。
横隔膜にのるように位置し、最上部は鎖骨の2~3cm上までにあります。
深く息を吸おうとするとき、お腹や胸にたっぷり空気を入れようとする人も多いけれど、鎖骨まで意識を向けて肺全体を使って呼吸することを意識してみましょう。
肺の下には横隔膜、その下には肝臓や胃など内臓が接しています。単に接しているのでなく靭帯を通して繋がっているので、横隔膜の前後運動と連動して臓器を刺激し、その内臓機能の活性化にも繋げることができます。
美しい姿勢は呼吸から
背中が丸まっているときの呼吸、腰が沿っているときの呼吸はそれぞれどんな感覚でしょうか?
背中が丸いと息は吸いにくく、腰が沿っているときには吐きにくい。
それくらい呼吸と姿勢は密接に関係しており、深く呼吸をしようとすれば自然と姿勢が良くなるし、姿勢が整えば呼吸もしやすくなります。
呼吸と連動する筋肉は全身に張り巡らされているのですが、最も重要な筋肉が「横隔膜」であり正しい姿勢を維持する上で欠かせません。
横隔膜には大きな特徴が二つあります。
①横隔膜は、二足歩行の不安定な体で姿勢を維持する下半身の筋肉と繋がっている。
②横隔膜と腹横筋、多裂筋、骨盤底筋からなるインナーユニットの底上げで姿勢維持には欠かせない筋肉。
つまり呼吸を深めることで、姿勢維持に働く筋肉が総活躍し美しい姿勢につながるということが言えます。
本来の呼吸を取り戻して元気になる
1日約3万回すると言われている呼吸。
生命の維持に必要な機能だからこそ、無意識下でも常に呼吸は行われています。
現代人に多い呼吸は、「浅い腹式呼吸」と「腹胸式呼吸」と言われます。
先ほど記した横隔膜の動きが小さいため、疲れやすさを感じやすくなっているそうです。
ではヨガではなぜ深い呼吸が必要か?
ヨガの観点からいうと、浅い呼吸はプラーナ(気)の働きを乱し、不調を生み出すと言われます。
プラーナとはヨガの概念で「生命エネルギー」のことを意味し、プラーナの働きが正常であれば身体は軽快で気持ちもスッキリ。
一方でプラーナの働きが乱れると、内臓の不調、血液循環不良といった身体的不調、気分の落ち込みなど精神的にも影響してきます。
意識しない普段の呼吸では、肺は30%しか使えていないかも知れないと言われいるので、意識して隅々まで呼吸を巡らすことでエネルギーが増加し、心と体にもたらす影響が大きいとされるのです。
「不調を改善したい」という理由で、ヨガを選んだ方も多くいますね。
ヨガが近年人気を博しているのは、心身に何らかの不調を感じる方が増えているからとも言えるのかも知れません。
呼吸は自律神経の働きを制御する
私達は、自分の意思で「心拍数を増やすこと」も「血圧を上昇させる」事もできません。これらの命に関わる営みは「自律神経」が調整しています。勝手に心臓を速くして命を終わらすなんてことあってはなりませんから。しかし呼吸だけは意識的に自律神経に働きかけることができます。
交感神経は「戦闘モード」、副交感神経は「リラックスモード」の相反する働きを持っていますが、バランスよく働くことで心身の健康を保っています。
交感神経 | 💛 | 副交感神経 |
興奮 | 脳 | 安静 |
速くなる | 呼吸 | ゆっくりになる |
増加 | 心臓 | 減少 |
上昇 | 心拍 | 下降 |
活動低下 | 胃腸 | 活動向上 |
収縮 | 子宮 | 弛緩 |
脳の働きは自分の意思でコントロールできませんが、呼吸のペースは自分でコントロールできます。
代謝が良くなるのは、臓器の中の血流が良くなるということ。臓器の血流を促すには呼吸を深めて横隔膜を動かすこと、呼吸を深めると副交感神経が優位になるので、内臓機能も活動向上し、血流が促されリラックスにつながるという双方からのアプローチができる。
現代人の多くは交感神経の過緊張が原因の不調が増えているために、お医者様からもヨガが体に良いと勧められる理由の一つになっていると思います。
呼吸をしにくい状況でも安定した呼吸を続けること
マットの上では動きながら不安定なポーズを取ったり体を捻ったりと、呼吸がしづらい状況下でも呼吸が安定できるところを探す。
マットの外では、不安や心配、緊張があっても呼吸を深めていくことで安定をもたらす。
マットの上だけでなく、日々の生活に深い呼吸を取り込むことで安定した、落ち着いた自分でいられる練習へと繋がっていきます。